存在を口にすると現れるという都市伝説の正体は?『電氣人間の虞』詠坂雄二
「電気人間って知ってる?」一部の地域で根強く語られている奇怪な都市伝説。真相に近付く者は次々に死んでいく。語ると現れ、人の思考を読むという電気人間は存在する!?ライターの柵馬朋康もまた謎の解明に乗り出すが、複数の仮説を拒絶する怪異は、彼を出口の見えない困惑の迷宮に誘うー。ミステリか、ホラーか。ジャンルの枠を軽妙に超越する鮮烈の問題作!
「BOOK」データベースより
タイトルについて
本作のタイトルですが、初見では「電氣人間の虜(とりこ)」かと思ってしまったのですが、実際は『電氣人間の虞(おそれ)』なんですよね。
読めるかいっ!
それから、「電氣人間」ってのも気になりました。
「電気」ではなく「電氣」…。
Google先生に聞くところによると、「氣」という漢字にはエネルギーやオーラという意味があるそうです。
そして「虞」は心配や懸念を意味するとのこと。
難しい言葉も調べてみると作品の趣旨がわかって面白いものです。
装丁・表紙について
デビュー作『リロ・グラ・シスタ』をはじめ、詠坂雄二の文庫本の表紙は一貫して本作のような雰囲気ですね。
ちょっとダークでミステリアス、それでいて不快ではない雰囲気は嫌いではないです。
電線の上に座る「何者か」が電氣人間を表しているのだと思います。
ストーリーや私的思い入れ
確か「ブックオフオンライン」でテキトーに面白い本を探していたときのこと。
ふとした瞬間に飛び込んできたタイトル『電氣人間の虞』、著者・詠坂雄二。
詠坂雄二の名前は聞いたことがあったのですが、まだ読んだことがなくポチったことを思い出しました。(中古ですみません…。)
先述のとおり、「電氣人間の虜(とりこ)」だと思っていた次第ではありますが、こうして私は「詠坂ワールド」に足を踏み入れたのでした。
本作はミステリでありながら、読み進めていくと非常に不思議な感覚に襲われます。
掴みどころがないような、ミステリなのかホラーなのか、はたまたSFなのかよくわからなくなってきますね。
ただ、ミステリとしての評価は非常に高く、面白いミステリやおすすめミステリを挙げるような話題となると、必ず本作を推している方を見かけます。
ただ、名作の常でアンチも多く、現に本作はアンフェアとは言わないまでも、ちょっとコレはどうなのってところもあり、好き嫌いが分かれる作品だと思います。
まぁ、万人受けする小説なんてこの世にはありませんが…。
キーとなるのはやはり「電氣人間」です。
電氣人間の特徴は、「語ると現れる」「人の思考を読む」「電気で人を殺す」などなど。
あまり言及するとネタバレとなってしまいますが、当然これらの設定が伏線となり、読者へのフィニッシングストロークをブチかまします。
その一撃があまりにも強烈で、細々した作品への難癖も吹き飛ぶでしょう。
個人的に、一読即解(読めば解かる)の典型的作品ですな。
-
前の記事
私的裁判・双龍会が真実を暴く『丸太町ルヴォワール』円居挽 作成日:2021年1月16日
-
次の記事
天才鬼才・最原最早の思惑とは?『 [映]アムリタ』野崎まど 作成日:2021年1月25日