希望に満ちた未来を夢見る少年の行く末は?『絶望ノート』歌野晶午
中2の太刀川照音は、いじめられる苦しみを「絶望ノート」と名づけた日記帳に書き連ねた。彼はある日、頭部大の石を見つけ、それを「神」とし、自らの血を捧げ、いじめグループの中心人物・是永の死を祈る。結果、是永は忽然と死んだ。が、いじめは収まらない。次々、神に級友の殺人を依頼した。警察は照音本人と両親を取り調べたが、殺しは続いた。
「BOOK」データベースより
タイトルについて
『絶望ノート』。
このタイトルを聞いて思い浮かべる作品がひとつありますよね。
『DEATH NOTE』。
本作は実は『DEATH NOTE』に似た設定を孕んでいます。
つまりは日常生活の苦悩や苦痛、絶望を書き連ね、憎む相手の死を願うとそれが実現するということですね。
恐らく著者・歌野晶午も若干、いやかなり意識していたはずです(妄想)。
装丁・表紙について
校舎が描かれており、その奥で少年たちがたむろしています。
これは恐らくいじめの瞬間でしょう。
後述しますが、本作は600ページを超える長編なのですが、かなり胸糞悪いシーンも多く登場します。
ですので、明け透けにいじめシーンを表紙に登場させ、デカデカと『絶望ノート』なんて書かれていて、もう不穏な空気しか感じませんね。
しかし「絶望」の文字、いくら何でもデカすぎやろ!
ストーリーや私的思い入れ
先述したとおり、本作はいじめを受ける少年・太刀川照音の絶望の物語です。
太刀川照音(たちかわしょおん)という、いわゆるキラキラネームが原因でいじめを受けることになるのですが、コレは現実でも起こり得ることでしょうね…。
いや、実際に起っていると思います。
特に序盤はいじめシーンなどが満載で、読み進めるのは苦痛かもしれません。
そういった点ではイヤミス要素が強いかもしれませんね。
ですが、安心(?)してください。
そこは本格ミステリの巨匠・歌野晶午です。
一筋縄ではいかないだろうという予想が容易ですね。
『葉桜の季節に君を想うということ』や『リピート』と比較すると本ミスとしては見劣りするのかもしれませんが、タイトルや表紙、雰囲気をトータルする総合力ではひけをとっていないと思います。
最後に、このようないじめがフィクションの中だけで起こる世になることを願っています。
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