江戸川乱歩の名作たちが現代に蘇った!『Dの殺人事件、まことに恐ろしきは』歌野晶午

江戸川乱歩の名作たちが現代に蘇った!『Dの殺人事件、まことに恐ろしきは』歌野晶午

長崎港を訪れた「私」は、ビデオ通話で恋人に風景を見せながら旅する奇妙な男と出会う。男に誘われた路面電車での観光の車中、「私」はその恋人が、人気アイドルのヴィーナスだと明かされる。だが、2人の馴れ初めを語る男の話には、明らかにおかしな点があり…(「スマホと旅する男」)。本格ミステリ界随一の騙しの達人が、江戸川乱歩の名作群を最先端テクノロジーでアップデートした、驚愕の翻案ミステリ短編集!

「BOOK」データベースより
Advertisement

タイトルについて

ちょっと不思議なタイトルですよね。

「まことに恐ろしきは○○」ならばわかるのですが、「まことに恐ろしきは」で終わっているのは、違和感ありありです。

本作は短編集で、このタイトルは短編のひとつ『Dの殺人事件、まことに恐ろしきは』から取られています。

短編の表題作って大体最初に登場する気がしますが、本作では3番目に位置しています。

ちなみに本作の短編すべてのタイトルが、江戸川乱歩の作品をパロったものになっているんですね。

  • 『椅子?人間!』⇒『人間椅子』
  • 『スマホと旅する男』⇒『押絵と旅する男』
  • 『Dの殺人事件、まことに恐ろしきは』⇒『D坂の殺人事件』
  • 『「お勢登場」を読んだ男』⇒『お勢登場』
  • 『赤い部屋はいかにリフォームされたか?』⇒『赤い部屋』
  • 『陰獣幻戯』⇒『陰獣』
  • 『人でなしの恋からはじまる物語』⇒『人でなしの恋』

歌野晶午らしいユーモアがありますね。


装丁・表紙について

本作は短編なので、それぞれのストーリーに足したイラストが描かれているんですかね。

と思ったら、人間椅子以外何を表しているのかがわからないという…。

ちょい前に紹介した作品も結局何を意味しているのかわかりませんみたいなこと書いてしまいましたし、想像力と読解力の問題かな?

次こそは自信を持って説明できる作品を紹介しないといけませんね(泣)。


ストーリーや私的思い入れ

先述のとおり本作は江戸川乱歩の作品のトリックを現代風にアレンジした作品ですが、いずれの作品も歌野晶午らしいウィットに富んだ現代ミステリですね。

『密室殺人ゲーム 王手飛車取り』に見られるように、歌野晶午は本当に誰もやらないことを思いつく発想が素晴らしい!

表紙の意味がわからないとか言っている誰かにも、その発想力をわけて欲しい…。

いずれの作品も本当に面白いのですが、個人的に好きなのは『椅子?人間!』でした。

私自身は恥ずかしながら『人間椅子』を読んだことはなかったのですが、そのストーリーはあまりにも有名です。

ですので、あえて人間椅子とは何かについて触れてストーリーに触れます。

できれば本作を読む前に、『人間椅子』を読んでおいたほうが良いかもしれません。

もちろん、読んでなくても愉しめます。

「人間椅子」とはその名の通り「人間が椅子になっている」というわけではなく、「人間が入っている椅子」ということですね。

普段私達が使用している椅子にこっそり誰かが入っていたら、それはそれは恐ろしいですね。

本作『椅子?人間!』では『人間椅子』の現代版として、文明の利器を利用したストーリーに改変されているのですが、それだけでは終わらないのが歌野晶午の手腕。

ほどよいイヤミスに仕上げてくれています。

コンセプトだけ聞くとバカミスの類いかなって思いますが、原作への愛も感じられ、それでいて現代に江戸川乱歩が蘇ったような気持ちにさせてくれます。

パロディというレベルでは収まらない上質のミステリをご堪能あれ。