息つく間もない傑作SFサスペンス『ジェノサイド』高野和明
イラクで戦うアメリカ人傭兵と、日本で薬学を専攻する大学院生。まったく無関係だった二人の運命が交錯する時、全世界を舞台にした大冒険の幕が開く。アメリカの情報機関が察知した人類絶滅の危機とは何か。そして合衆国大統領が発動させた機密作戦の行方はー人類の未来を賭けた戦いを、緻密なリアリティと圧倒的なスケールで描き切り、その衝撃的なストーリーで出版界を震撼させた超弩級エンタテインメント、堂々の文庫化!
タイトルについて
「ジェノサイド」という単語はあまり私生活では使用しませんよね。
ゲームなんかでは登場したりしますが…。
意味は「大量虐殺」。
何とも不穏な感じのするタイトルですね。
装丁・表紙について
壁画のようなイラストが特徴的な表紙です。
本作は「人類の歴史」などがストーリーに大きく関わるため、それを上手く表現していると思いました。
よくある構成ですが、上下巻の表紙が繋がるようにデザインされています。
ストーリーや私的思い入れ
月並みですが、「何て疾走感のある小説なんだ!」と思いました。
高野和明の小説は何冊か読んできましたが、ミステリにもサスペンスにも「巧さ」が感じられましたが、本作はその集大成です。
SFミステリ要素、息つく間もないサスペンス・ハードボイルド、それらの融合がとても素晴らしい仕上がりになっています。
登場するキャラクタも個性的で、それぞれの役割が明確になっており、とても感情移入しやすいですね。
そして悪人はうんざりするほどの悪人。
ストーリーの根幹となる「未知との遭遇」は、将来人類に起こりえるかもしれません。
それは、この作品のように新人類なのか、それとも宇宙からやってくるのか、その可能性をリアルに、そしてエンターテイメントとして成立させたことは、多くの読者の胸に刻まれたことでしょう。
数々の文学賞を受賞、ノミネートを果たしたのもうなずけますね。
上下巻構成でかなりの長編ですが、間違いなく一気に読めてしまう傑作だと思います。
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