盲目の少女と逃亡犯の奇妙な同棲生活『暗いところで待ち合わせ』乙一

盲目の少女と逃亡犯の奇妙な同棲生活『暗いところで待ち合わせ』乙一

視力をなくし、独り静かに暮らすミチル。職場の人間関係に悩むアキヒロ。駅のホームで起きた殺人事件が、寂しい二人を引き合わせた。犯人として追われるアキヒロは、ミチルの家へ逃げ込み、居間の隅にうずくまる。他人の気配に怯えるミチルは、身を守るため、知らない振りをしようと決める。奇妙な同棲生活が始まったー。書き下ろし小説。

「BOOK」データベースより
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タイトルについて

怖いですよね、このタイトルは。

「暗いところ」ってのが抽象的かつ恐ろしげなイメージを掻き立てる、非常に読み手の興味をそそるものになっています。

つまり、タイトルだけを見るとホラーかなって思いがちなのですが、実は本作はミステリなんですよね。

詳細は後述しますが、特にホラー要素はありません(笑)。


装丁・表紙について

いや怖すぎやろ!

ホラーじゃないと言いながらこのタイトルこの表紙はもうホラーとしか思えない

でもホラーじゃないんだよなぁ…。

改めて見直してみてもやっぱり怖い。


ストーリーや私的思い入れ

まず初めに、本作は文庫本描き下ろし作品となっています。

つまり、文庫本のデメリットである発行されてから文庫化されるまでに時間がかかる問題を無視し、いきなり文庫化されたというわけです!

文庫ファンとしてはコレほど素晴らしいことはありませんね。

話が逸れましたが、本作はタイトルや表紙からは明らかなホラー感が漂っています。

私も書店でホラーかと思い手に取り、裏表紙のあらすじを見て
「あ、ホラーじゃないんや…。」
って思いましたよ。

だってどう見てもホラーやん!

そして恋愛小説でもあります。

まず本作は設定(シチュエーション)がとても面白いです。

盲目の少女・ミチルの家に勝手に上がり込み住み始めた、殺人の濡れ衣を着せられたアキヒロの奇妙な同棲生活が描かれています。

これだけだと、何だかエロい雰囲気がしてきますが、まったくそんな展開はありません(笑)。

同居生活を実際にするにはいろいろと不都合もあるでしょうし、少々ご都合主義的な描写があるのは否めないのですが、アキヒロの人の良さにはほっこりさせられます。

さらに肝心の結末についても、ゴリゴリの本格ミステリとはいきませんが、『夏と花火と私の死体』でデビューした作家らしい手腕を見せつけられます。

何より、前述の特殊設定を活かしつつ、ミステリとしても恋愛小説としても高レベルの作品を世に送り出す乙一には、今後も期待せざるを得ません。

本作はほんの260ページほどしかないがゆえ、スピーディーかつ濃厚な読書時間が過ごせますよ。

物語序盤のミチルのように引きこもって本作を一気読みし、清々しい気分で外に飛び出しましょう。