ユニークなタイトルからの本格ミステリ『アリバイ崩し承ります』大山誠一郎
美谷時計店には「時計修理承ります」とともに「アリバイ崩し承ります」という貼り紙がある。難事件に頭を悩ませる新米刑事はアリバイ崩しを依頼する。ストーカーと化した元夫のアリバイ、郵便ポストに投函された拳銃のアリバイ…7つの事件や謎を、店主の美谷時乃は解決できるのか!?「2019本格ミステリ・ベスト10」第1位の人気作、待望の文庫化!
「BOOK」データベースより
タイトルについて
初見でとても興味を惹かれるタイトルです。
アリバイ崩し、すなわち「ハウダニット」に焦点が当てられているのだろうと思うと同時に、「承ります」という謙譲語をタイトルに使用してくるユニークさには驚かされました。
装丁・表紙について
「アリバイ崩し」を担う美谷時乃のイラストが描かれており、周囲には時計店の店主らしく数多くの時計が描かれています。
作中では作業着を着ていることが多かった時乃ですが、ここではワンピースを着ています。
原作の清楚でちょっとミステリアスな彼女の雰囲気がよく表現されていますね。
ストーリーや私的思い入れ
本作の著者である大山誠一郎は、著作こそ少ないものの質の高い本格ミステリを書くことで有名ですね。
そしてこの『アリバイ崩し承ります』は「2019本格ミステリ・ベスト10」で第1位、「このミステリーがすごい!2019年版」で第15位に選出されるなど、業界でも評価の高い作品です。
特に「本ミスベスト」第1位は2021年現在、直近の選出作でも阿津川辰海『透明人間は密室に潜む』、相沢沙呼『medium 霊媒探偵城塚翡翠』、今村昌弘『屍人荘の殺人』など、その年の話題をさらった作品しかありません。
これは読み始める前から期待しかありませんね。
まず本作は連作形式の短編集で、それぞれのストーリーは独立しているのですが、登場人物が共通している作品です。
主人公である県警本部捜査一課第二強行犯捜査第四係・僕が、時計店を営みながらアリバイ崩しも請け負う美谷時乃がメインキャラクターとなっています。
登場人物やページ数も少なく、時乃の「時を戻すことができました。」の口上などライトノベルのような感覚で読み進めることができた作品でしたね。
余談ですが本作は2020年に浜辺美波を主演にドラマ化されました。
本作読了前だったのでドラマはあえてスルーしたのですが、時乃役の浜辺美波はぜひ機会があったら観てみたいですね!
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