横溝正史ミステリ大賞受賞の学園ミステリ『消失グラデーション』長沢樹

横溝正史ミステリ大賞受賞の学園ミステリ『消失グラデーション』長沢樹

私立藤野学院高校のバスケ部員椎名康は、ある日、校舎の屋上から転落し、痛々しく横たわる少女に遭遇する。康は、血を流すその少女を助けようとするが、何者かに襲われ、一瞬意識を失ってしまう。ほどなくして目を覚ますと、少女は現場から跡形もなく消えていた!?開かれた空間で起こった目撃者不在の被害者消失事件。複雑に絡み合う青春の傷と謎に、多感な若き探偵たちが挑む。第31回横溝正史ミステリ大賞・大賞受賞作。樋口真由“消失”シリーズ。

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タイトルについて

なぜだわかりませんが、初見で非常に興味をそそられるタイトルでした。

「消失+グラデーション」という関連性のなさそうな単語同士が繋がっただけなのに、これほどまでに印象的なタイトルになるのかと感心したものです。


装丁・表紙について

この表紙を見て興味そそられない人はいないでしょう。

ロッカー(?)に頭を突っ込んだ女子高生が椅子に脚を上げている何とも不思議な光景となっています。

インパクトだけなら文庫本トップクラスではないでしょうか。


ストーリーや私的思い入れ

長沢樹のデビュー作であり、「第31回横溝正史ミステリ大賞」を受賞した本作。

この賞は2021年現在、綾辻行人や辻村深月らベテランから若手までの人気作家が選考委員を務めており、選出されることは非常に名誉なことですね。

まず、文章や登場人物の掛け合いがライトノベルのような印象を受けましたが、文章自体は読みやすく、好感が持てました。

ただ、複数人で会話するシーンでは、誰がどのセリフをしゃべっているかが分かりづらいところもありましたのが残念なポイントではあります。

若者の葛藤や交友などのリアルさに感心したのと同時に、トリックについては若干苦しい部分もありましたが、消失した少女・網川が抱える「ある秘密」を隠れ蓑に、作者の隠蔽したかった真実をラストまで読者に悟られないようにする技術はお見事でした。

トリックは確かに賛否両論あると思いますが、それはどの本格ミステリにも多少なりとはありますので…。

すらすらと読めてしまう文章に油断していると、真実に辿り着くのは難しいかもしれませんね。