私的裁判・双龍会が真実を暴く『丸太町ルヴォワール』円居挽
祖父殺しの嫌疑をかけられた御曹司、城坂論語。彼は事件当日、屋敷にルージュと名乗る謎の女がいたと証言するが、その痕跡はすべて消え失せていた。そして開かれたのが古より京都で行われてきた私的裁判、双龍会。艶やかな衣装と滑らかな答弁が、論語の真の目的と彼女の正体を徐々に浮かび上がらせていく。「ミステリが読みたい!」新人賞国内部門第2位、「このミステリーがすごい!」国内部門第11位。
「BOOK」データベースより
タイトルについて
そもそも「丸太町」ってどこやねん!?
調べてみると、京都府の平安女学院の近くの駅が丸太町駅というようですね。
そして「ルヴォワール」って何やねん!?
またまた調べてみると、恐らくつづりは「revoir」でフランス語のようですね。
意味はGoogle先生によると「また会う」、頭に「au」が付いて「au revoir」で「さようなら、また会いましょう。」とのこと。
これで物語の舞台が京都であること、何らかの「別れ」と「再会」が語られているのだろうと想定できますね。
装丁・表紙について
何のイラストなんやこれは…。
後述しますが、恐らく本作品に登場する私的裁判「双龍会」(そうりゅうえ)のシンボルとかかなぁと予想します。
そしてタイトル『丸太町ルヴォワール』のデザインや色味、フォントが個人的にはすごく気に入っているのですよ。
ストーリーや私的思い入れ
円居挽のデビュー作にして傑作ミステリ。
そうなんです、本作がデビュー作なんです。
余談ですが、デビュー作が傑作というのは、実は文学の世界ではそこまで珍しくもないのです。
パッと思いついたのが綾辻行人『十角館の殺人』、島田荘司『占星術殺人事件』、住野よる『君の膵臓をたべたい』、湊かなえ『告白』などなど枚挙に暇がありません。
小説家としてデビューするんですから、きっと自信の渾身のアイディアで綿密な校閲の果に出版するというのも理由のひとつでしょうね。
そして、そういった現在も活躍している作家のデビュー作と比較しても、勝るとも劣らない傑作が本作というわけですね。
本作は非常に特殊な設定のもと、ストーリーが進行します。
それが先述した私的裁判「双龍会」です。
まずは双龍会に関する用語を紹介しておきます。
■双龍会(そうりゅうえ)
実際の裁判のように真実を追求するものではなく、ハッタリをかまそうが虚偽の証拠を捏造しようが、それを論破されなければOKという裁判。
最終的に裁判長である「火帝」を納得させられたほうが勝者。
龍師の代打なども可。
■御贖(みあがない)
実際の裁判の「被告人」と同義。
■火帝(かてい)
実際の裁判の「裁判長」と同義。
■青龍師(せいりゅうじ)
実際の裁判の「弁護士」と同義。
■黄龍寺(おうりゅうじ)
実際の裁判の「検事」と同義。
■鳥官(ちょうかん)
実際の裁判の「証人」と同義。
■黄母衣内記(きぼろないき)
京都に伝わる稀覯本(きこうぼん)であり、この書の所有者は双龍会にかけられることがない。
まさか義務教育を終えて20年ほどが経過し、これほどの用語を覚える必要があるとは思いませんでした。
でも大丈夫、勝手に頭に入ってきてスラスラ読めますから♪
ストーリーとしてはいわゆる「ボーイ・ミーツ・ガール」+「本格ミステリ」って感じなのですが、言い回しなどはちょっとラノベライクな感じ。
「落花落とし」や「暗殺剣」なんて必殺技も繰り出され、これなんて逆○裁判?
しかし、とにかく主人公・城坂論語が殺人の嫌疑をかけられ挑む「双龍会」の応酬にはワクワクさせられます。
しかも、目まぐるしく展開する双龍会のウラに散りばめられた伏線が見事で、エンターテイメント性も抜群です。
城坂論語が求めていた「ルージュ」に出会った読者も、彼のように魅入られてしまうかもしれませんね。
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