可愛い表紙に似つかわずダーク!『天体の回転について』小林泰三
科学とは無縁の世界で育った青年はある日、月世界を目指して天空へと伸びる「天橋立」に向かう。そこで待っていたものは、とびきり可愛い謎の少女だったー無垢な青年が抱く、宇宙への憧れとみずみずしい初恋を描いた表題作のほか、ロボット三原則の盲点が引き起こす悲劇を描いた「灰色の車輪」、宇宙論とクトゥルフ神話が驚愕の融合を果たす「時空争奪」など、ヴァラエティに富んだ全8篇収録の傑作ハードSF短篇集。
タイトルについて
非常に興味をそそられるタイトルだと思いました。
「天体=宇宙」とするならば、小林泰三的宇宙SFが展開されるのかとワクワクしてしまいますね。
小林泰三と言えばホラーのイメージが強いですが、SFも上手いですよね。
装丁・表紙について
不思議な衣装を纏った少女のイラストですね。
何となく既視感あるなぁと思っていたら、初音ミクをデザインしたKEI氏なんですね。
本作は短編集なのですが、その表題作『天体の回転について』に登場するリーナのイラストだと思いますが、非常に可愛い!
ストーリーや私的思い入れ
本作は短編集で、それぞれがSF要素を含んでいる作品です。
一応SF小説としての体をなしているのですが、少なからずミステリ要素も含んでいるのでSFミステリとしても愉しむことができますね。
ちなみにタイトルはあのコペルニクスが「地動説」を提唱した際の『天球の回転について』をもじっているとどこかで見たような気がします。
さてさて本作では先述のとおり短編すべてがSF要素を含んでおり、それぞれに異なった設定や環境が描かれています。
さすがは小林泰三と言える内容となっているのですが、個人的には『性交体験者』が最も著者らしさを感じる作品だと思ったので、一押しします。
冒頭からの不穏な雰囲気が何とも言えず、結末は若干わかりやすくもありましたが、強烈なフィニッシングストロークを喰らわせてくれます。
可愛い表紙に似つかわずダークな展開も多いですが、その他の作品も面白く、小林泰三の入門として読んで頂けたらと思います。
そして、ジャケ買いも捗る一作ですね!
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