恋愛小説がラスト2行でミステリに!『イニシエーション・ラブ』乾くるみ
僕がマユに出会ったのは、代打で呼ばれた合コンの席。やがて僕らは恋に落ちて…。甘美で、ときにほろ苦い青春のひとときを瑞々しい筆致で描いた青春小説ーと思いきや、最後から二行目(絶対に先に読まないで!)で、本書は全く違った物語に変貌する。「必ず二回読みたくなる」と絶賛された傑作ミステリー。
「BOOK」データベースより
タイトルについて
まずタイトルを見てほとんどの方が思うことは
「イニシエーションって何やねん?」
ではないでしょうか。
ちなみに私はマクドナルドで学生時代にバイトをしていて、その時のポジションの名前に「イニシエーター」というのがあったので、まずそれが浮かびましたね。
懐かしいなぁって…。
それはさておき、「イニシエーション」とは作中では「通過儀礼」という意味で語られています。
つまり『イニシエーション・ラブ』とは「大人になるための通過儀礼の恋愛」ということですな。
そんなものが自分自身にあったかと言われたら、なかった気がする…。
装丁・表紙について
コレちょっと購入当初から頭に疑問符が浮かんでいたのですが、どういう意味なんでしょう。
最初は主人公・鈴木と繭子かなぁって漠然と思っていたら、何か右側の人の腕がちょっとゴツいなって…。
じゃあ左のへそ出しコーデの人は誰ってなって、もうワケワカです。
ただ、ぱっと見で書店に並んでいたら目にとまるような装丁かなって思います。
単行本の方は「タロットシリーズ」らしくタロットが置かれていたりしてシンプルだったのですが、誰か文庫本の表紙の意味を教えてください(泣)。
ストーリーや私的思い入れ
乾くるみの代表作、そして叙述トリックを用いたミステリとしても非常に人気の一作です。
もう既にあちこちで紹介されているので、あえて叙述ミステリであることは隠しません(笑)。
叙述作品であることがわかっていても、本作の魅力は損なわれることはありませんしね。
あと、本作は「恋愛ミステリ」ではありません。
あくまでも恋愛小説かと思いきや、実はミステリでしたってことですね。
もうあらゆるサイトなどでネタバレ書評が書かれているので、あえて私は核心については触れませんが、非常に驚かされるミステリという一言です。
ちなみにこういった叙述ストーリーは映像化は不可能だというのが定説で、あえてそこに挑戦して玉砕した映像作品は多数あります。
ですが、本作の映画化は賛否ありましたが非常にコミカルかつシリアスに仕上げ、伏線もわかりやすく解説されており、個人的には非常に楽しめました。
特に前田敦子の演じる繭子がハマリ役で、ちょっと彼女に対する見方が変わりましたね。
まぁとりあえず小説の方は読書好きとしては「必読」の一作だと思いますので、未読の方は是非。
ヒットした作品にありがちですが、古書店で100円程度で投げ売りされているのでコスパは最強ですよ(笑)。
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